いたずら電話をかけるのにハマった
昔 ひとりも友達がいなかった
学校に行っても話し相手がいなくて、休み時間はずっと机に突っ伏して寝たフリをしたり、本を読んだりして過ごしていた
朝起きて、学校に行って、家に帰って、寝るまで誰ともしゃべらない日が続いた
私は話すのが苦手で、吃ったり、言葉が思いつかなかったり、人の目を見るのが本当に難しかった
クラスの子の話題といえば流行りの音楽や、誰と誰が付き合って別れてといった噂や、先生の悪口だった
私は流行りの音楽や恋愛に興味がなかったし、(恋愛自体はしたかったけどブスだし一生ひとりだと思った)先生の悪口を言えるほど関わってはいなかったから、クラスの子と話すことがなかったのだ
まあいいか、ラクだし 、って思ってたけど、
夜ひとりで好きなバンドの音楽を聴きながらふとんをかぶると、涙がこぼれた
この生活は変わることはなかった
私は毎月お小遣いを700円もらっていたYouTubeで好きな音楽を聴くか図書館で借りた本を読むぐらいしか趣味がなかった私はそれでじゅうぶんだった
ある日の帰り道、通学路をはずれてなんとなく駅へ向かった
田舎の駅だから人はいなかった
駅周辺にはふらっと入れるような喫茶店とかはなくて、オフィスビルがポロポロ建っているだけで、私はふらふら駅の周りを歩いた
ふと、公衆電話ボックスを見つけ、中に入った
ヤミ金やテレクラ?みたいな治安の悪い貼り紙だらけのボックスは、なぜか落ち着いた
タウンページが置いてあった
目をつぶってペラペラめくって、てきとうなとこで指を挟んでとめて、そこに書いてあった番号に電話をかけてみた
毎月もらっていたお小遣いをいれて、ドキドキしながら電話をかけた
よく行く本屋さんに繋がり、もしもし、なんとか書店です、と返ってきた
私は、あの、なんとかって本置いてありますか、と言った
なんとかって本はとっさに頭の中で考えたてきとうなタイトルだ
うーん、出版社や書いた人の名前は分かりますか?ときかれた
私はわかりませんと答えた
ゴメンなさいって叫んで切った
一呼吸置いて、またタウンページにのっていたてきとうなとこに電話をかけた
ふつうの家につながった
もしもし?
って男の人の声で言われて、
私はあの、こんにちは、エッチしたいんですけど、って言った
どうしてこんなこと言ったのかわからない 中学生男子みたいだと思った(中学生だったけど)
そしたら相手、黙り込んで、しばらくしたら、私の居場所をきいてきた
今どこにいるの?って
私はドキってして、
あ、なんとか駅の公衆電話ですって正直に答えた
いまからそっちに行くで待ってて、
って言われた
私は急に怖くなって、だけど、ハイって答えた
電話を切って、3分くらい待ってみて、やっぱり怖くなって、 そこから全力で走って家に帰った